食うや食わずの我が人生
Eat 13号: ジェンダー

この記事は2001年8月に公開されたものです。

地球上で食べ物に困っているのは人間だけじゃない。南極で、砂漠で、アフリカのジャングルで、動物たちはこんなふうにサバイバルしている。

必殺の一撃:ナイルワニ

さまざまな教訓を世にしらしめてきたウォルト・ディズニー。なかでもいちばん役に立つのは「ワニに、笑顔を見せてはならない」という言葉だろう。特に体長7メートルのナイルワニ(アフリカに生息)の獰猛さは、鋭い牙で他の動物を食いちぎる恐竜が地上を支配していた中生代を思わせるほどだ。その大きさからは想像もつかない速さで浅瀬から飛び出し、小動物から大の男までをも引きずり込んで食べてしまう。さらにすごいのは、一度食べたら2年間食事をしなくても平気という点。この間、ワニの歯はすべて生えかわる。万が一、歯が生えかわったばかりのワニに遭遇したら、感心して眺めている場合ではない。とにかくダッシュで逃げ出そう。

男は黙って……:皇帝ペンギン

いつも昼前に空腹に耐えられなくなっているというあなた。皇帝ペンギンのことを考えれば、そんなことは言えなくなるかもしれない。体重35キロとほかのペンギンよりずっと大きく、まさしく皇帝の風格を持つ彼らの生息地は、南極大陸とその海域。年に1度、5月か6月に繁殖期をむかえるのだが、たったひとつの卵を産んだメスは、それをオスペンギンに託してエサさがしに出かけてしまう。それから約8週間にわたって、オスはメスと顔を合わせることもなく、何も食べず、ただひたすら卵の上に座っている。自分の体温によって、マイナス40度の外気から卵を守るのだ。この間にオスの体重は半分に減り、過酷な自然から身体を守るために必要な脂肪分までも、ほとんど失ってしまう。そうなると同じ境遇のオス同士で協力体制に入り、体温を逃さないよう寄りそって持ちこたえる。無事、卵がかえり、メスが戻ってきた暁には、打ち上げパーティでも盛大に催してやりたいくらいだ。

復活のワザ:ラクダ

苦行にチャレンジしたくなったら、20日間、砂漠で飲まず食わずで過ごしてみる、というのはどうだろう?ラクダはみんなそうしているのだ。ラクダにはヒトコブラクダとフタコブラクダがあるが、どちらも、胃の中に100リットルもの液体を、コブの中には36キロの脂肪分を蓄えることができる。長期間にわたって不本意ながらの断食がつづくと、ラクダのコブはだんだん小さくなっていき、全体重の40パーセントまで失うことがある。しかし、ラクダは失った水分をものの10分で補給できる。また、ラクダの胃は、草などのエサを固体と液体に分離して蓄えられるため、たとえ水を飲めなくても、何とか対処できる。


文/ ナイジェル・ケンダル 写真/ A. & M. シャー/OSF、ダグ・アラン/OSF、デイビッド・ケイレス/OSF