星条旗に捧げるアイスクリーム
Eat 16号: Sweet
この記事は2003年11月に公開されたものです。
アメリカ政治における保守とリベラルの対立軸は、ここ20年で大きく変化してきました。かつて共和党の本流だったジョージ・W・ブッシュ大統領が、テロとの戦いでイラクに侵攻したのは2003年3月のこと。ちょうど同時期に、アメリカ保守連合のリチャード・レスナー事務局長は、「保守風味」のアイスクリームを売り出して話題になりました。雑誌「Eat」のスウィーツ特集号では、そのレスナー事務局長に直撃インタビュー。フランス流のリベラルなお菓子を敵視し、銃保持の権利を訴え、ビル・クリントンのスキャンダルを嘲笑ったスター・スパングルド・アイスクリーム社設立の背景が語られています。
きっかけはオリジナル・フレーバー「フランチバニラ大嫌い」の誕生にあります。フレンチバニラで何かおもしろいことはできないかと話していたときに、居合わせた人が皆フランスが嫌いだという点で意見が一致したのです。こう言った時点で、我々は国家間の憎しみの温床だと思われてほとんどの人が引いてしまうのですが、我々にしてみればそれは誤解です。
我が社の社長が昨年家族で映画を観に行ったとき、本編が始まる前にスーパープレミアムアイスクリームとして人気のベン&ジェリーの大げさな広告がスクリーンに流れたのです。社長は奥方にこう言いました。「彼らのアイスクリームは確かにうまいが、あのリベラル風を吹かせているところが最悪だね。あのアイスを1個買うごとに自分の払った金の一部が自由主義的な目的につぎこまれていくのかと思うと頭に来るよ。いっそのこと保守主義を前面に打ち出したアイスがあってもいいんじゃないか?」。こんな具合にどんどんアイディアが発展していったのです。
グルメ・アイスの人気の理由は、豊富な乳脂肪がリッチでクリーミー、さらにスムーズな味わいを醸し出すからです。
将来的には我が社の製品がアメリカ議会の上院・下院の食堂で販売あるいは提供される日が来ることを望んでいます。下院のカフェテリアでは、ベン&ジェリーの棒付きアイス「ピース・ポップ」が売られていて、我が社のスター・スパングルド・アイスクリームもそこに置いてほしいのですが、ご存知のように政治家という人種はちょっとしたことですぐにビビりますからね。
つい最近、新しいフレーバーを発表しました。その名も銃の保持を保証する合衆国憲法修正第2条に敬意を表して「ガン・ナット(銃器マニア)」。さらにガン・ナット・フレーバーが1個売れるごとに収益の1ドルが米国銃保持者協会という団体の活動資金に廻るよう提携も結びました。光栄にも、あの有名ロックスター兼スポーツマン兼銃器愛好者テッド・ニュージェント氏の支援も得ています。銃器マニアのニュージェントもガン・ナット・アイスのファンというわけです。
我々は小手先の子供だましを売っているわけはありません。本当においしいアイスクリームを販売しているのです。
オリジナル・フレーバー4種の売り上げの1割はチャリティに寄付されます。会社設立の際、サイトを通じて軍関係の慈善事業を推薦してくれるよう呼びかけたのです。
ラインナップはもっと充実させたいと考えています。「USマリーン・タフネス・クッキー&クリーム」とか、バトルシップをもじって「USネイビー・バトル‘チップ’」といったフレイバーなども思案中です。
文/Eatチーム 写真/ヴィヴィアン・ロネー