祝祭のごちそう
Eat 1号: 誘惑

この記事は2000年10月に公開されたものです。

6 DISHES FROM 6 FESTIVALS

冬もいよいよ本格化してくると、お祝いの季節に備えて特別な料理の支度が始まる。これは万国共通の慣わしだ。世界の誰が、どこで、何を、どんな風に食べているのだろう。そして、これら伝統料理をもっとヘルシーにすることはできるのだろうか。


Q.これ、何?
感謝祭の七面鳥

Q.感謝祭の七面鳥って?
詰め物をした丸ごとの七面鳥をクリと一緒に焼いたものが一般的。詰め物はタマネギ、セロリ、パンくず、ソーセージ、ハーブなどで、味つけをする。付け合わせは野菜とベイクドポテト、またはマッシュポテト。

Q.いつ食べるの?
11月の第4木曜日。(カナダ人は10月の第2月曜日)

Q.お決まりの行事は?
感謝祭は1863年に祝日となったが、行事としては1621年のピルグリムまでさかのぼる。この日は家族と一緒に神の恵みに感謝をする時間。七面鳥、ポテト、パイなどでお腹がいっぱいになった後は、家族そろってテレビでアメリカン・フットボールの試合を見るのが恒例。

Q.どんな味?
味はしっかりついていて、肉は柔らかくてジューシー。これにフルーツベースの甘いソースをかけて食べる。クランベリーソースが多い。パンプキンパイも季節のデザートとして好まれる。

Q.身体にいいの?
七面鳥は低脂肪たんぱく質で、セロトニンの前駆体であるトリプトファンを豊富に含む。ハイになることはないが、少し眠くなる。肉そのものは低脂肪だけれど、詰め物とグレイビーが高カロリーな分、プラスマイナスゼロというところか。

Q.もっとヘルシーにできる?
胸肉をたくさん食べて、皮は残す。マッシュポテトは低脂肪牛乳とマーガリンで作ってみるといいかもしれない。バターは避けたい。ソーセージは低脂肪のものを。

Q.これ、何?
コナファ

Q.コナファって?
バターを混ぜ合わせたフィロ生地が器代わり、中身は牛乳、砂糖、クリームまたはタピオカを使う。また、砂糖、水、レモンの汁を使うこともある。

Q.いつ食べる?
ラマダーンの時。今年はイスラム太陰暦で12月。

Q.お決まりの行事は?
ラマダーンは、日の出から日の入りまでの断食で、1カ月間続く。夕暮れになると断食は明け、食事のあとにコナファを食べることが多い。毎夜特別な祈りが捧げられ、その終わりにはプレゼントの交換をする。ラマダーンとは、預言者ムハンマドにコーランの啓示があったことを祝うものである。

Q.どんな味?
とにかく甘い!バラの水やオレンジの花の水を加えてもっと甘くする!

Q.身体にいいの?
甘い食べ物の宿命で、コナファもヘルシーな食品というわけにはいかない。でも、断食の後、エネルギーを回復するためにはこれに尽きるのである。

Q.もっとヘルシーにできる?
"フィロ" とよばれるパイ皮を重ねたようなものを使えばよい。これは掟破りにはならない。クリームは控えめに。

Q.これ、何?
お餅

Q.お餅って?
材料は、米、米、そして米。これを粘り気が出るまでついたもの。

Q.いつ食べる?
本来はお正月。焼いたお餅に醤油をつけたり、お雑煮などにして食べる。

Q.お決まりの行事は?
新年のお祝いの行事として、12月31日はお寺にお参りして、1月1日か2日には神社に初詣に行く。

Q.どんな味?
味のない、大きくて噛み切りにくいものが口の中にある感じ。醤油をつけたり甘く煮た豆(*お汁粉)に入れたりすると、なんと、お餅そのものも醤油や甘く煮た、豆の味になる(イギリス人の説)。

Q.身体にいいの?
炭水化物が豊富で力がつくものの、ベタベタするのでのどを通りにくい。毎年お餅がのどにつかえて窒息死してしまうお年寄りが必ずいる。これが後に残された、家族たちのお祝いムードに影を落とすのである。

Q.もっとヘルシーにできる?
日本食は基本的にとてもヘルシーだが、塩が多く使われていることもある。塩分の摂りすぎには気をつけたい。醤油は控えめに。それと、おばあちゃんからは目を離さないこと。

Q.これ、何?
クリスマス・プディング

Q.クリスマス・プディングって?
干しイチジク、レーズン、サルタナブドウ、リンゴ、マツの実、アーモンド、レモンの皮、砂糖漬けした果物の皮、蜂蜜、そしてミックススパイスを卵、パンくず、脂肪で固める。

Q.いつ食べる?
12月25日(クリスマス)のディナーの後

Q.お決まりの行事は?
ヤドリギの下でキスしたり、プレゼントの入った紙製クラッカーを引いたり、女王陛下からの年に一度の御言葉を聞くためにテレビを見たり・・・だいたいその後はジェームスボンドの映画を見るか、アルコールで死んだように眠るか、である。プディングには6ペンスなどおまけがついていることもあり、飲み込まずに、しかも噛まずにこれを見つけたあなたはラッキーなのである。

Q.どんな味?
びっくりするほど濃厚で、甘い。ラムソースかハードソースをつけるのが普通で、これまたカロリーを上げてくれる。ラムかブランデーをザブザブかけて、火をつけることもある。

Q.身体にいいの?
よいはずがない。大量の砂糖とアルコールもさることながら、そこには動物性脂肪も含まれているのだから。これは通常、牛か羊の肉から摂ったもので、牛脂と同じである。イギリスは西ヨーロッパで第1位の心臓病率を誇っている。このクリスマス・プディングも、その要因の1つかも。

Q.もっとヘルシーにできる?
小麦粉と脂肪を使わずにパンくずとマーガリンだけを使う。そして砕いたナッツとドライフルーツをたっぷり入れよう。ほかのものを食べるという案もある。国内で増えつつあるベジタリアンに合わせてか、最近では市場で売られているクリスマス・プディングには動物性の食材を使わないものも多くある。

Q.これ、何?
餃子

Q.餃子って?
牛肉、豚肉、タマネギ、そのほか野菜やショウガを調味料と合わせて練って、皮でくるんだもの。

Q.いつ食べる?
太陰暦を祝う15日間、すなわち1月の終わりまたは2月の始めごろ。

Q.お決まりの行事は?
守らなくてはならない習慣やタブーが1日ごとに決まっている。その数はすごい。一般的に中国の新年は家族と祖先を敬う時で、世界的に有名な獅子舞で締めくくる。

Q.どんな味?
醤油、お酢、ゴマ油、ニンニクで作ったソースをつけて食べる。オリエントそのものという食べ物である。

Q.身体にいいの?
中華料理はどのメニューにも言えることだが、ヘルシーかどうかは使う油の種類と量、そして肉の質による。

Q.もっとヘルシーにできる?
この期間に食べる料理すべてに使うとよいとされる"幸運を呼ぶ" 野菜を使えばヘルシーかもしれない。"幸運を呼ぶ" 野菜とは、ハスの実、ギンナン、海苔、乾燥豆腐、そしてタケノコなど。


Q.これ、何?
ラトカ

Q.ラトカって?
卵、タマネギ、ジャガイモ、過ぎ越しの祭りに食べる種を入れないマツァというパン、スパイスを合わせた生地を揚げて作る、ジャガイモのパンケーキ。

Q.いつ食べる?
12月24日

Q.お決まりの行事は?
マカベア家がエルサレム神殿を再び神に奉納したことを祝うユダヤの祭り"ハヌカー"、別名、光の祭りが行われる。日暮れ時に"メノラ" と呼ばれる燭台の一つのキャンドルを灯す。そして、祈りを捧げ、歌で賛美する。また、(はっきり言ってつまらない)ドライデル(こま回し)という子どもたちの遊びもある。

Q.どんな味?
サワークリームと一緒に食べるとおいしい。サツマイモ、クローブ、ショウガなどで作って、アップルソースと一緒に食べると甘くなる。

Q.身体にいいの?
"メノラ" を灯すのに使われる油は宗教的意義があるからよいとしても、ラトカそのものは揚げ物なので、あまり身体にいいものとは言えないのでは・・・。

Q.もっとヘルシーにできる?
"揚げる" という行為はどうにもできないが、エキストラバージンオリーブオイルを使えば少しはましかもしれない。

文/ジョン・ポール・カトン 写真/日置武晴