分別と良識

2021. 02. 05

アリスン・ジャンベール / Eat Creative共同創業者

クライアントと良好な関係を築き、幅広い文化的バックグラウンドをもつメンバーをひとつにまとめるために

Eat Creativeはこれまで20年以上にわたり、国をまたいで、さまざまなプロジェクトに取り組んできました。チームメンバーの国籍もまちまちで、その多くは日本を含め、自国外でくらした経験があります。そんな環境から得られた学びのひとつは、プロジェクトの成否、クライアントとの関係強化、理想のチームづくり、いずれにおいても、小さな心配りが大きな違いをもたらすということです。たとえば、「自分が伝えたいこと」だけでなく「各人が置かれている状況や、業務にもっている印象」に目を向けてみると、よりよい結果につながりやすく、これはとりわけプロジェクトやミーティングの大半がリモートワーク下で行われている昨今、とても重要です。ここでは、クライアントと良好な関係を築き、異なる文化的バックグラウンドをもつメンバーをひとつにまとめるために気をつけるべき点についてまとめてみました。当たり前に思えるものもいくつかありますが、なかには見落としがちなポイントもあります。

言語に気を配る

どれだけ流暢に話せるとしても、第二言語(あるいは第三言語)でのコミュニケーションは神経をつかうもの。些細な誤解が結果に影響するビジネス環境ではとくにそうです。テレカンファレンスではボディランゲージや表情も読み取りづらいため、発言の意図を誤認されるリスクも高まります。そのため、ともにプロジェクトに取り組む各チームメンバーの言語レベルをきちんと理解した上でミーティングを進行することは不可欠。会話のペースを調整し、ミーティングの合間にはおさらいや小休止をはさみ、各人が自国語で会議の内容を確認できる時間を設けること。必要な場合は録音し、後で各自が自分のペースで聞き返せるようにすることをおすすめします。

ミーティングの目的をはっきりさせる

ミーティングのゴール、そして各メンバーに求められる要素を明らかにしておくこと。また、そこから得た結論と、各自の「やるべきことリスト」も明確に。前述の通り、それぞれの言語レベルに配慮し、後でゆっくり見返せるよう内容をシェアしておくこと。各メンバーが発言できるよう心がけ、発言をさえぎったりしないこともたいせつです。

「暗黙の了解」を避ける

同じ言語でコミュニケーションができるからといって、ものごとの見方が同じというわけではありません。文化的背景やビジネスエチケットは国ごとに違い、「暗黙の了解」は通用しません。過去実際にあったケースを例にあげてみましょう。イギリス人の社員が日本人の同僚に作業を依頼したところ、同僚は了承。ところが、それはこの作業の影響で、ほかの別のタスクの進行が遅れることが前提でした。背景が伝わっていなかったため、イギリス人社員はなぜスケジュールが遅れたのか理解できず困惑。心の内が伝わっていると思い込まないこと、そして念には念を入れ、タスクやスケジュールを繰り返し確認しておくこと。

グローバルにアンテナを張る

クライアントやステークホルダーが活動している国にアンテナを張っておくこと。祝日はいつか。ビジネスの一般的な営業時間はどのようなものか。時差はどれくらいか。台風などの自然災害による被害は起きていないか。コロナウイルス感染防止に関するルールはどうなっているか。デモなどによるビジネスや交通機関への影響はないか。こうした各国の情勢について理解しておくことは、円滑なコミュニケーションやプロジェクトの進行に少なからず貢献します。

最適なコミュニケーションツールを選ぶ

LINE、WhatsApp、Slack、Teamsなど、コミュニケーションツールの種類は多様ですが、ある国で普及しているツールが、別の国でもそうであるとは限りません。チームメンバー全員がつかいやすいツールを選ぶことで、テクノロジーに関するストレスを減らすことができます。

こうしてまとめてみたものの、わたしたちは今も日々、さまざまな課題に直面し、つねに正しい行動を取れるわけではありません。よりよいコミュニケーション、ひいてはビジネスのために、度々見返したいと思います。