ブランドとビジネスのいい関係

2020. 09. 29

スティーブ・マーティン / Eat Creative共同創業者

ブランディングは、どこかつかみどころがないようにも思えます。ブランドということばの解釈は人によって異なり、それが日々の業務にどのように影響するのかも、わかりづらいものです。過去にはクライアントから、「かたちのない資産」や「ふわっとした概念」という表現で例えられたこともあります。

このようなあいまいさはクライアントだけでなく、クリエイティブエージェンシーにとってもしばしば問題となります。複雑かつ抽象的な部分に囚われすぎて、それが現実、とりわけビジネスの世界でどのような役割を果たすのか、見落としてしまうことがあるのです。

Eat Creativeでは、クライアントを含めプロジェクトに関わる全員がブランディングへの認識をシェアすることで、スムーズに作業を進め、より効果的なブランドを創出できるよう取り組んできました。

ここでは、わたしたちのようなエージェンシーが普段「ブランディング」と呼んでいる業務を、顧客であるクライアントの視点から見てみましょう。まずひとつ重要なのは、ブランドとビジネスは密接な関係にある、ということです。ブランドの成長はビジネスの成長につながり、その逆も然り。そのため、ブランディングプロジェクトにおいて、ブランドがクライアントにとってどのように役立つのか、日々起こり得る現実の問題をどのように解消できるのという文脈で語ることが、エージェンシーには求められます。

すべては「ブランドの存在意義」を定義するところからはじまります。

ブランディングプロジェクトにおいては、ブランドが「誰に何を約束するのか」「ほかのブランドとどう違うのか」そして「市場におけるニーズをどのように解消するのか」、明確に定義する必要があります。   

ブランディングの対象となる企業や製品、サービスは、市場におけるニーズを解消するためのものであり、ビジネスストラテジーは、これらを発展させるためのものといえます。

ブランディングの重要な目的は、そんなブランドの礎となるアイデンティティとストーリーを創出することなのです。

これらすべての要素が互いに補完し合うことで、ブランドの理念が正しく体現され、ビジネスの成長を促進します。

もう少し詳しく見てみましょう。図ではブランディングに関係する要素を「ブランディング」「ビジネスストラテジー」「コミュニケーション / マーケティング」「製品 / サービス」に分類していますが、これらはさらにこまかい要素によって成り立っています。ブランディングについて理路整然と話すためには、こうしたすべての要素に目を配ることが必要です。

「ビジネスストラテジー」「製品 / サービス」について正確に理解しておくために、クライアントおよびその関係組織を交えてのヒアリングやディスカッションは、おおきな意味をもちます。エージェンシーが理解を深められるだけでなく、クライアントがブランディングを「自分ごと」として捉えられるからです。

そして、この間にも、すべてを包括的な視点で見ることを意識づけておきます。これにより、ブランディングにおけるさまざまな要素や、コミュニケーションツールやマーケティング手法にまつわる判断が、主観的なものでなく、ロジックにもとづいた客観的なものへと変わるはずです。